無表情の能面から感情があふれ出る時
- 福男 谷
- 2019年9月3日
- 読了時間: 2分
能面のように無表情」、「能面のような顔」のように無表情を形容するときに使いますが、能面では、中間的表現とも言われます。
能面の中間的表現は、能にどのような意義があるのでしょうか。「能とは何か(野上豊一郎著)」から紹介してみます。
「能の一つの演出において、女主人公のこの中間的表情の面を表現を、動かない目と唇を彫り出した面によって演じなければならない場合、面制作者は役者の立場に立って、その使用に耐えうる工作を施さなければならなかった。
言い換えれば相当の演技の時間を十分に持ちきれるような仮面の制作に肝胆を砕かねばならなかった。 女面・男面においては、感情はいつでも必要に応じて、いかようにでも溢れ出ることができるのが、常はどこかに隠されてあって、あたかも、無表情の如き表現となっている。」
何等の感情をも常はその表面に表していないのが特徴。但し、一度その仮面に在る角度の運動をあたえるとそれはたちまち生きてきて、役者の意図するままの感情を表現し得るように工夫されている。
この中間的表情の面に豊かな感情を与えるのは、演者の技術です。 微妙に面をあおむけたり、うつむいたり、左右に動かすそのスピードで驚くほど生き生きとした表情が生まれてきます。 「能面の表現力は必ずしも能面その物の中には存在しないことを知しねばならぬ。それなら何処にそれはあ在るか。曰く、能面の後ろに在る。それを懸けた頭の中に在る。心根、精神、気迫、そういった言葉でそれを説明できる」



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